人は、無理をすれば疲れる。
だが、日本には無理をするのが称えられる社会風土があるため、暗黙のうちに無理を強いられる。
たくさんの仕事を抱えながら残業している人や、ブラック企業で休日まで働かされている「社蓄」などとも呼ばれる人たち、子育てをしながら仕事をしているシングルマザーなど、無理をして疲れを溜めている人は多い。
前にも書いたが、あるサイトの話題のつぶやきランキングに「疲れた」という言葉が、上位に自然とランクインしてくることもあるくらい「『疲れた』が溢れている社会」なのが実情だ。
少し前に『心の疲れをとる技術』という本を読んだ。
この本には、現代の疲弊した人たちに対する助言がわかりやすくまとめられている。
著者の下園さんは、この本の中で「疲れている人の多くは、疲れに気づいていないし、それをとる方法を知らない」と言っている。
だから疲れが溜まるし、疲れが取れなくて慢性化していく。
そうなると、病気にもかかりやすくなるし、うつ病などの心の病にもつながりやすい。
疲れに適切に対処することは、この「疲れている社会」には必須の知識といえる。
今日は、この『心の疲れをとる技術』から学んだ、疲れの症状をチェックするための知識と疲れをとる方法を、この本の中から紹介したいと思う。
疲れたと感じない? でも心も身体も実は疲れているかも
疲れを感じにくい人もいるが、それは意識に「疲れ」が上っていないだけで、身体や心には気づかないところで変化が起こっていることもある。
無理して疲れ・疲労が溜まっていくと、以下のように人間の4つの面に変化が起こるという。
1.身体
これはそのままの意味で、疲れから回復できず、体を壊すということだ
2.人間関係
感情にも影響が出てイライラしたり、しがみついたりして人間関係を壊していく
3.行動
疲れて頭が少しバグりだして、いつもはやらない計算や手続きのミス、不注意による事故、いい間違い、記憶違いによるトラブルの多発
犯罪行為、危険な行為、暴力行為、大きなギャンブルなどをやりたくなる
4. 心
うつ状態におちいる
統合失調症につながることも
疲れは目には見えにくいが、知らぬ間にこのような面で影響を及ぼしている。
では、どうやって疲れは溜まっていくのか。
この本の中に、疲労の進行について3段階のわかりやすい説明があったので、次にそれを紹介しよう。
疲れの3段階 ―「疲れが取れない」状態になる前に症状をチェック!
疲れの第1段階は、すぐにとれる普通の過労
この段階は、「今までの健康貯金(蓄えていたエネルギー)を使いながら、なんとか持ちこたえている状態」らしい。
「活動の量や質、集中力、やる気などのパフォーマンスも落ちることはない」という。
この段階の疲労は、無理が一時的なものなら、ちょっと休めば元の状態に回復できるようだ。
疲れの第2段階は別人化の始まり
この段階になると、「いつもの2倍疲労を感じやすく、疲労回復にも普段の2倍の時間がかかるようになる」と筆者はいう。
体の症状としては、不眠や食欲不振、だるさ、頭痛(頭の重さ)、目や肩、腰の痛み、吐き気、関節痛、めまい、耳鳴り、などとして出てくるらしい。
酒やタバコが増えたり甘いものをとりすぎたり、行動にも変化が起こる。
異性との付き合いが乱れたり、金遣いが荒くなったり、人づき合いが悪くなったり、笑わなくなり、攻撃性が強くなるなどが症状として表面化してくることもある。
また被害妄想や弱音が多くなることもあり、責任や仕事を避けるようになることもあるようだ。
ここまでの症状がでていても、これが無理がたたって疲れているからそうなったと自覚できない人が多いという。
つまり、この段階の疲れには対処できない人が多いということだ。
そのまま本人が適切に休むことなく状況が変わらないと、次の第3段階に入っていく。
疲れの第3段階は別人化!
第3段階に入っていると、疲労は普段の3倍に感じるようになり、回復にも3倍の時間が必要になるという。
もうここにくるとなかなか疲れがとれない状態が慢性化している。
仕事で忙しい→疲れる→休んでも週1回→回復に3倍かかるから疲れはとれない→また仕事にいく、というループが続きどんどん疲れが溜まっている状態だ。
この状態になっていると心に変化が表れ、ものごとの感じ方や自分の考え方が変わってくるらしい。
本人の様子が平常時とは違って別人のようになることから、筆者の下園さんは「別人化」と呼んでいる。
「やたらに不安になり、自分を責め、自信をなくす」「アルコールやギャンブルにのめりこむ」などといったこともあるようだ。
別人化の典型は、「死にたくなる」という気持ちがでてくることだという。
この段階までくると、本人も苦しみの異常さに気がつくらしいが、それを無理が重なって疲れが溜まったせいだとは思えない人が多いのだそうだ。
それよりも、むしろ「自分の能力や努力が足りないだけ。もっと頑張らなければ」と考えてしまう人が少なくないという。
これはもしかしたら、俺が前に書いた『会社をやめたいのにやめられない原因は学校教育にあった?』のように我慢を小さい頃から強いられているからなのかもしれない。
我慢が美徳として刷り込まれることで、「延々と仕事をこなす」のが理想化され、無理を延々と積み重ねて疲労が溜まっていくことになる。
疲れて苦しいと感じている状況にさえ、先のように「自分の努力が足りないからだ」などと考えれば、さらに無理をすることにつながってしまう。
ひどくなると、「通院・入院、失踪、事故や自殺(未遂)という極端な形」になることもあるのだそうだ。
こうなる前に、どうにかして第三者の介入が不可欠なのだが……
心と身体の疲れをとり回復する方法
上記のような症状を少しでも知っていれば、自分の疲れに気づき早めに対処できる。
疲れへの対処法について、筆者の下園さんが書いているのは、端的に言えば次の2点である。
・睡眠をどうにか確保すること
これはわかりやすいだろう。
疲れているのは睡眠時間が足りていないことも多い。
疲れをとるには睡眠は基本なのだ
・「動的ストレスケア」を控えること
「動的ストレスケア」というのは、スポーツをしたり、ドライブしたり海外旅行したりしてストレスを解消しようとすることらしい。
スポーツをすれば、体は疲れるし、旅行に行っても帰ってくれば疲れでぐったりなんてことも多いので、例としてわかりやすいだろう。
結局はストレスを解消しようとして疲れてしまうのである。
だから、こういうストレスケアは控えて、「静のストレス解消法」を選択するべきだと下園さんは言う。
軽い散歩やヨガ、読書や音楽・映画鑑賞、料理、森林浴、庭いじり、俳句や短歌、以後や将棋などの頭脳ゲームなどが、この解消法に入るらしい。
そして夜更かしせず、ゆっくり寝る時間をとる。
疲れをとるには、激しく動くのは控え、静かに楽しめることをするのが効果的なのだ。
しかし、第三段階に入っている人は、簡単には疲労が抜けなくなっているので、長期休暇をどうにかしてとるか、医療の助けを借りることも必要になってくるだろう。
疲れを取る方法で回復したと思っても要注意
上記のような疲れを取る方法を実行し、疲れから回復したと思っても要注意で、簡単には全部は抜けないのだという。
体にはまだ疲れが溜まってるのだそうだ。
それが抜けるまでは無理をしてはいけないらしい。
なので、疲れている人は、休日の「動的ストレスケア」を控えることが重要になりそうだ。
休みの日は、「せっかくの休みだし……」と、どうしても外に行きたくなりがちだからだ。
たとえ働かない日があっても、体が休まらないことをしていては疲れを取ることにつながらない。
忙しく働いている毎日の中で、休みの日にも旅行の予定などを入れてアクティブに動いている人は、リア充にみえるかもしれないが、疲れは間違いなく溜まっていく。
俺も週5で働いていたときは、休みの日には外に遊びに行ってしまって、日曜の夜は疲れが抜けなくて「明日もまた仕事かぁ……」と憂鬱なことがあった。
(まったくリア充ではなかったが……)
週休3日~4日の今は、週に1回は無理に外に出かけたりせず休むための日を作っても無理ないスケジュールが組めるので疲労が溜まってるな~と思うことは少なくなっている。
実は週5で働くというのは、人によっては働きすぎなのかもしれない。
俺には今くらいの働き方がちょうどいいとわかったので、お金なくて貧乏でも続けようと思っている。
今回紹介した『心の疲れをとる技術』には、他にも疲れたときの様々な対処法が書いてあり、 疲れに関して意外と知らないことがたくさん詰まっている。
興味のある人は読んでみてください。
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