存在価値がない人とか無駄な人生なんてないのかもよ

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大通りから一本入った小道を歩いていた。

まだ昼過ぎくらいで、汗がにじみ出てくるような暑さだ。

できるだけビルの影に隠れて日が当たらない場所を歩く。

帰って冷たいものがのみたいなぁ~なんて思っていたら、
後ろから、男の叫ぶ大きな声が聞こえてくる。

耳をむければ、何か歌っているようだ。

「よくぼぉ~にむかってぇ、はしぃるぅ~
あのれぇ~しゃに、のぉてゆこおぉ~」

ああ、ブルーハーツの『トレイントレイン』か。

振り返ってみれば、
後ろからやってきたのは、
小太りで坊主頭の眼鏡をかけた
もっさりとした印象の20代前半~中盤くらいの男で、
茶色の短パンに、黒いTシャツをきていた。
ママチャリのペダルに足を思い切り踏み込むようにして、
かなり早いスピードでこいでくる。

よくみたらイヤフォンをしていて、
音楽を聴きながら、それに合わせて大声で叫び続けているのだった。

「みえないじゆうがぁほしくてぇ~
みえないじゅうをうちまくるぅ~」

そうか、この叫びは彼の「銃」なのか。

「見えない銃」を彼なりのやり方で
路上でうちまくっているのか。

などと思っているうちに俺の横を通り過ぎて、

「ほんとぉ~のこえをきかせておくれよぉ~」
という言葉がフェードアウトするように小さくなって、
あっという間に視界から遠くなった。

そのときは、「ふふっ」と思わず笑ってしまったのだが、
彼の叫びが消えたあとで、
なんだか、いい風景をみたなぁと、
数十秒の出来事にしみじみしていた。

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「存在価値がない」とか「無駄な人生」とかないんじゃないか

後から考えれば、その日に見た風景の中で、
今でもはっきりと思い出せるくらい一番印象的な出来事だった。

イヤフォンを使うことで彼だけしか聞いていない音楽のはずなのに、
自分の世界に入りすぎて、外の世界にその世界がはみ出してしまったみたいだ。

これは主観だけれど、自分の歌ではないにも関わらず、
あの男が全身で表現されているような場面に感じられた。

こうしてあの男は、しゃべったことさえない全く見ず知らずの俺という人間に、自分でさえも思いもよらぬ仕方で影響を与えていた。

自分に存在価値がないとか、
生きている意味がないとか、
無駄な人生だ、
なんて思ったりすることもあるが、
思ってもいないところで、人は関係し合っている。

街角の偶然の出会いでさえも。

この世界に存在するものというのは、こんなふうに個々の人間には考えも及ばないような仕方で、複雑に絡み合い影響し合っているのかもしれない。

そういうことを再認識した1コマだった。

世界のすべてに意味があるというのは、たまに聞くフレーズだが、これもまた1つの真実なのかもしれない。

「使えない」「役に立たない」人には存在意義や生きている意味がないのか?
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