ここ何年も、新幹線を移動手段としてほとんど選んでいない。
長い距離の移動でも、電車か長距離の高速バスがほとんどだ。
理由の一つはもちろん安いから。
電車は青春18きっぷの使用期間内なら、合計1万円で5日も乗り放題だし、高速バスも日時を選べば遠い場所でも新幹線に比べたら格段に安い。
金はないが時間はけっこうある俺みたいな人間にはちょうど良い移動手段だ。
この間も長距離を移動することになったので、青春18きっぷを買って何時間も電車に揺られる移動をした。
昔、関東から九州までこれで旅したこともある。
さすがに1日では無理で2日かかったけど。
ちなみに帰りは格安航空をつかってみたら3千円くらいだった。
今日は、そんな貧乏旅行を楽しむための方法について書きたいと思う。
貧乏旅行の長時間移動を楽しむための道具
お金をできるだけ使わない貧乏旅行に必須の移動手段は、青春18きっぷを使った電車と長距離バスがメイン。
安い分、移動時間は長くなる。
そんなに移動に長い時間がかかってつまらなくないの?と思う人もいるだろうけど、窓の外の風景をみたり、本を読んだり、うつらうつらと昼寝したりしていると、長時間の移動でも特に問題なく過ごせる。
俺は移動時間には、もちろんスマホもみたりするが本も読みたくなる。
紙の本は旅行に持っていくと荷物が多くなるので、kindle paper whiteをもって旅に出る。
この端末は小さくて軽いのに、何千冊分も気軽に持ち運べるし、kindle paper whiteはスクリーンの文字を白黒オンリーすることで、活字を読む場合には、かなり読みやすい。
kindle paper whiteで本を読むのが3割、外の風景を見ているのが4割、寝ているのが2割くらいだろうか。
また、青春18きっぷでのれる電車は、特急料金・急行料金のかからない普通電車だ。
長距離を普通電車で移動する場合、乗り換えが1時間〜2時間くらいに1回はあるので、必然的に歩くことになる。
飛行機みたいにエコノミー症候群にもなりにくい。
俺は窓から見える風景をみているだけで何時間も過ごせるので、こういう性格が長距離移動と相性のいい点なのかもしれない。
ビルがひしめきあう大都会の街並みから、住宅地や工場地帯を過ぎて、だんだんと建物が少なくなって、畑や田園地帯が拡がる風景に変わり、海沿いの海岸線の見える場所や、ほとんど人の住んでいない山間部の木と草が生え放題の一帯を過ぎる。
しばらくすると、だんだんと家屋が増えてきて、しばらくいくとビルなんかもちらほら見えてきて再び都市部に入っていく。
こういう変化を何度も繰り返す。
こんなふうにして次々と変わっていく車窓の風景は、目を楽しませてくれるし、移動距離をより実感させてくれる。
移動時間での人間観察が意外に面白い
移動時間が長いからこそ、乗ってくる客にも自然と意識がいく。
たとえば青春18きっぷでいく鈍行列車の中に目をやれば乗客も色とりどりだ。
この間は、たまたま入り口の隣の座席に座ったら、ある駅で仕事帰りの20代くらいの女性グループが入ってきた。
1人の子はグループの子から「〜ちゃんカワイイし、モテるんでしょ〜?」と言われていたが、その子は2〜3年前に彼氏と別れた後は「いい人が見つからないんだよねぇ〜」という状態でずっと彼氏がいないらしい。
その元彼とは長い年月付き合っていて結婚する予定だったが、親に会うため彼の実家を訪れたとき、嫌味のオンパレードをくらったらしく、こんなのやっていけないと思って別れたのだそうだ。
もう一人の女性は、20近く年の離れた男と付き合っていたのだが、性格の不一致で別れたという。
「だいたい思ってたんだけど、あの年でバツなし独身って、性格に問題あるに決まってるでしょー」とか言っていた。
「そう思っていたなら最初から付き合わなければよかったのに」とツッコミたいところだが、たまたま電車の隣にいた人間がグループの会話に唐突に横槍を入れても変人だと思われるだけなので1人脳内ツッコミにとどめ、いろいろな人生があるんだなぁという方向に考えをズラしていると、いつの間にか違う話に移っていた。
今度も男の話だ。
話題の男は、名刺の裏にプライベートの電話番号を書いて、仕事場でさえも同僚の女性に配りまくるようで、この番号なんですかと聞けば、「何か用があったら連絡して。合コンとかね」といって去っていくらしい。
彼女らは「あの勢いだけはすごいけど、キモいよねー!」と盛り上がったところで電車を降りていった。
なんということはないかもしれないが、俺にとっては人間観察をして見ず知らずの土地に生きる人間の多用な人生のあり様を見聞するのも移動中の楽しみの一つである。
貧乏旅行で長時間移動を選択。俺の人生を反映しているのかも
青春18切符なんかで長距離移動していると、遠くに新幹線が見える場所や新幹線と普通電車が並走する区間もあったりするんだけど、新幹線にはあっという間に抜きさられる。
9時間〜10時間かけて移動する場合なんか、何度抜かれているのかわからないくらいだ。
この間、さっそうと駆け抜けて行く新幹線をみていてあぁ、これも1つの生き方みたいだなぁ、とふと思った。
できるだけ速く効率的に目的地に向かう人の生き方には、俺のような人間はどんどん遅れをとっていく。
すでに地球何周分かの遅れをとっているかもしれない。
だけどよく考えてみれば、何に対して遅れをとっているのか。
給料をがっぽりもらって、新商品がでたらすぐに購入したり、たくさんの高価なものに囲まれて生活か。
高層マンションや大きな家に住んでセレブという言葉に象徴されるような人に羨ましがられる生活か。
これが多くの人が共有する「普通」の価値観なのかもしれないが、俺はそういう生き方をすでにドロップアウトしてしまった。
というか、自ら進んで選んだというより、自分の性格に合った人生の価値基準に歳を重ねるにつれてだんだんと気づいてきて、それに適合する道は人と違う方向にいく道しか残されていなかったのかもしれない。
窓からの風景を見ているのが好きな自分にとっては新幹線なんかだと速過ぎる。
見たい風景もすぐに通り過ぎてしまって、全体をなんとなく把握できる程度で細部に目をやることができない。
鈍行列車くらいのペースが風景を見るにはちょうど良くて、目に入ってくる場所の全体と細部の両方に注意を向けることができる。
人生においても同じことで、俺の場合は「短い時間で速く効率的に」という方法だと、元々がじっくりと時間を気にせず考えたいタイプだし脳の処理能力が速いほうでもないからか、次々と人生に起こる事柄を頭で処理するのに間に合わなくなりパニック状態になる。
コンピューターで例えるならフリーズした状態だ。
そうなると、そもそも何がしたかったのかという望みも見失ってしまうこともある。
望みが絶たれた状態、絶望である。
それよりはゆったりと構えて目の前に起こる様々なことを、気ままにじっくり考えられるくらいの余裕があるほうが間違った人生の選択をすることも減るし、俺にはちょうどいい。
人の生き方というのは実にいろいろで、人生を目的地に向かって効率よく超特急で駆け抜けていくような現代社会の価値基準に適応したスマートな生き方や選択ができる人間がいる一方で、そういう生き方に適応できない性格で、人生の道をゆっくりでいいから気ままに歩きたいという人間も少なからず存在する。
後者みたいな非効率的な人間は、決まった規律を守らねばならない集団社会の中ではそんなにうまくいくわけないし、結果としてドロップアウトしやすいのかもしれない。
その1つの例が俺みたいな人間なわけで。
正直もう、時間に追われた生活はできるだけしたくない。
公園の池でプカ〜っと浮かんでいる鴨や、通りすがりの道の真ん中で日向ぼっこしている猫をみているときに感じる彼らが過ごしているだろう、ゆったりとした時間を感じていたい。
俺には、そのほうが「ああ、なんかいいなぁ」と漠然とした幸福感を感じることができる。
まあ結局は自分にあった道を選ぶというのが大事なんだろう。
合わないペースを強制される環境にいると、結局辛くなる。
俺みたいなのは速いペースに息切れするが、ペースが遅過ぎるのにイライラする人もいるだろう。
誰にでも合った生き方というのはないし、自分の性格を見据えてそれにあった最適な生き方の選択をできれば一番いい。
考えるのにも時間が必要だから、勉強とか働く時間の他にも、もう少し余裕があれば、世界には幸せだと思える人が増えるかもしれないなぁ、でもそうじゃないから、「ゆるキャラ」や「癒し」という言葉に注目が集まったりするんだろうなぁ、とか今日も勝手な脳内妄想の流れに身を任せている。
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