アルバイトの金使って副業でFXする男。失敗したら死ぬんじゃない?

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俺は、煙草を吸わないし酒も飲まない。

その代わり、カフェや喫茶店にそこそこの頻度でいく。

家から外に出るきっかけにもなるし、その道中に太陽の光を浴びれるし、散歩することで適度な運動にもなる。

週休5日の日々を過ごすうえでは、これは外せない日課だ。

コーヒーは好きだが、なによりカフェとか喫茶店という空間に行く行為が楽しいのかもしれない。

カフェや喫茶店には、俺が普段はいろいろな人が出入りする。

普段はまったく接することがないような人が近くに座ることもある。

そんなことになると知らない世界への好奇心がくすぐられてしまう。

今日もカフェに座って休んでいると、隣の席に2人の男がやってきて、注文もせずにすぐに座った。

今回はその時の小話。

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隣に座ったのはアンバランスな二人組

隣に座った二人組、一人は西洋から来た彫りの深い顔で、背は高いがずんぐりむっくりした印象の男だ。

縮れた髪は短く刈られていて、あごひげは伸ばしっぱなし。

10cmくらいあって仙人みたいになっている。

図体がでかく、どっかの教団の教祖のイメージに近い。

使い古されて汚れたクロックスのサンダルにジャージパンツを履いている。

もう一人はひょろくて、背が小さい。

白い綿のショートパンツから伸びた脚には濃いすね毛がそわそわと生えている。

上は水色ティーシャツ。

それに全体が赤で前部の一部が白の派手なメッシュの野球帽を被っている。

後ろと前を逆にして。

「高くなったら売り時ですもんね~」小さくてひょろい方の男が話しかける。

「そうだね」教祖風な男は、低くて重い声でそっけなく答える。

自然なアクセントの日本語だ。

日本で生まれ育ったハーフか何かなのだろう。

「投資家にとってはここで下がると大きいですよね~、一般人にとってはどうでもいいのかもしれないけど」とひょろい男は早口でしゃべる

「そうだね」

「世界恐慌のときなんてみんなわかったんですかね~」

「どうだったんだろうね~」

「そろそろ注文しますか、何にします?」

「レモンティーで」

ひょろい男はレジに向かって行った。

あの男は教祖のパシリというか子分みたいだ。

なのでここからは彼を子分と呼ぶことにしよう。

教祖のポケットにからは、レシートが頭をのぞかしている。

そこには「いきなりステーキ」の文字。

このデカい身体を支えるには相応な店名だ。

どでかい肉で腹をしっかり満たしてからここにきたのだろう。

彼はリュックからそっと本を取り出す。

その本の名は……

ゲーテ全集。

さすが教祖らしい、教養高そうな本だ。

彼はその本に目を通し始めた。

しばらくして、子分が帰ってくる。

「はい、レモンティーです。930円!」

「これ、グランデサイズ?」

「はい、そうです、トールサイズとこれしかなかったんですよ~」

「そうなの?」教祖は子分にお金を差し出す。

俺が思っていたほどの上下関係でもないのかもしれない。

「ミルクチィーおいしぃー」唐突に子分が口にした。

なぜか声のトーンを何段階もあげて。

ミルクチィーって……

それから任天堂DSをバッグから取り出した子分。

「それ、おもしろいの?」教祖が低い声で尋ねる。

「前の失敗を生かして、どんどんよくなっていってますね。間違いなく伸びますよ、このゲーム! おもしろいにゃ~!」

おもしろいにゃ~、って……

教祖は「そうか」とひとこと。

なかなか見ることができないアンバランスな雰囲気の2人組。

俄然興味が出てくる。

教祖が意外にも興味のあることとは?

「疲れた……」教祖がつぶやいた。

「野菜とかとってないと体調管理できませんよ、野菜とかとってます?」

「とってない」

「コンビニとかに売ってる、あれとかおすすめですよ、ビタミンCとか入ってるし」

「あ~」教祖は聞いているのかいないのかよくわからない返事だ。

「ミルクチィ~おいしぃ~」子分も、さっきから定番になった一人言を続ける。

しばらくすると、子分に電話がかかってくる。

「なに?……あ~、自分できった」

きった? 何をきったんだろう?

俺はパソコンを見ながらも、耳のフォーカスは完全に教祖と子分にいく。

「自分でやったらうまく切れたから、ダメになったらいくよ……

あ~、そういえば新しいノートパソコンかったんだよね……

ん~、まあいいや……

またね、はいはい……」

子分は自分で髪を切っているのか。

「あ、もしかして、俺の親の話聞こえてます?」電話を切って子分は教祖に尋ねた。

「ちょっとだけ聞こえた、でもなにかわからない」と教祖はゲーテ全集から目を離さず興味なさそうに答える。

俺は聞いているけどな、と心の中で思う。

「しゃむーい! 半袖じゃここはしゃむーい!」

子分がまた一段と高い声をだした。

教祖はゲーテ全集に没頭していて完全無視。

子分は、ノートパソコンを開く。

Macbookだった。

これがさっき言っていた新しく買ったパソコンなのだろう。

「そ、そういえばですよ、やっぱアップルとソニーは敵でしたね~」

「そうなの」と教祖。

「ソニーのイヤフォンがアップルで使えませんでした」

教祖は返事をせず本に目をやったままだ。

「やべー、Wi-Fiの数がやばい! どれにすればいいんや、わいは!」と悲鳴をあげる子分。

店名と同じのWi-Fiは一つしかないんだが、見つからない人もいるんだろう。

そんなことより自分のことを「わい」と呼ぶやつが現実にいたことに俺は驚いた。

そして、子分は席をたち、店員にWi-Fiについて聞きにいったようだ。

「見つからないぞい。どれ?それがわかったら聞きにいかないんだけどな~。ああ、これか!」

子分は戻ってきてからも1人しゃべり続ける。

「俺、エロ画像とかも基本的にpixivでとりますよ~、興味ないだろうけど」

「ん~興味ない」

これだけでなく教祖はさっきから子分の話には興味なさそうにも見える。

「最近、そういうのばっかりになってきたんですよ」

子分は一人、小声で鼻歌を歌いながら、またMacbookに目をやる。

「ポンドもユーロもだいぶ上がりましたね~、ドルも。」

「懐かしい、最近やってないな」

教祖もFXの話には興味あるのか?

アルバイトの金でFX取引で稼ぐ男

「ダ・イ・ヤ・モ・ン・ドだねぇ~ですね、これは! ! ダイヤモンド型だ! このへんで売りだな……んん~これは下がるやつですね、テクニカル的には……」子分は興奮した様子で一人で画面を見ながらつぶやき続ける。

こんなところでプリンセスプリンセスの歌を聞くとは思わなかった。

「ん~やっぱり、今のバイトより向いてる。やってて勘が働くのはこっちなんですよ。自分はコミュニケーションは得意じゃないわけじゃないですけど、チームでやるのは苦手なんですよぉ~」

「それはいいことだ、向いてるって思ったことをやったほうがいい」と教祖。

これは間違いない。
俺も教祖に同意する。
さすが教祖だ。

「そういう意味ではFXは向いてるのかも。でも僕は実務家としては強くないとおもいますねぇ~……料理はむいてないとおもいますねぇ~、企画力のほうがあると思う」

「そうなんだ」と教祖はそっけない。

相変わらず子分個人のことには興味がないみたいだ。

「今やっただけでも、1時間分の時給ですよ~! わーいわーい!」

子分、すでに1000円くらい勝ったのか。

「この下がり方はいい、勝ちですわ! けっこう理想的じゃないですか?5分か10分ですよね、これ。これでもうバイトの2~3時間分の時給ですよ!」

「清算したの」

「清算しましたぁ~、2700円でしたね、ん!? これは買いかな?」

子分のテンションはさらに上がってきた。

俺がFXの口座を持っている理由

インターネットが普及し、バイトをやりながらFX取引をしている男が普通にカフェにいる時代になった。

この子分のように、毎日レストランのキッチンでバイトしながらも、FXでバイトで稼ぐ以上のお金を稼ごうとしている人間はぞろぞろといるのだろう。

FXを副業にしている人も、いるかもしれない。

俺も無職のころに、口座を作れば数万のキャッシュバックがもらえるというので、DMM外為ジャパンにFXの口座を作ったことがある。

たしかあの頃でも1つの口座をつくるだけで2万くらいキャッシュバックがもらえた。

無職で収入がなかった時代だったので、このキャッシュバックがそこそこの助け舟になった。



この世に存在するものにはたいてい興味がある俺。

一応どんなものかやってみた。

前から疑問はあった。

FXで稼ぐ金というのは、何を価値を生んでいるのか。

前からよくわからなかったのだが、実際にFX取引やってみても、その行為が何の価値を生んでいるのかわからなかった。

だが、うまくできればの話だが、飯を食ったり、服を買ったり、パソコンを買ったりするための金をクリック一つで確かに稼ぐことができる。

これは何の対価なのだろうか。

疑問は深まるばかりだった。

俺の結果はというと、勝ったり損したりを繰り返したが、少しはプラスにはできた。

なぜ俺がこういう投資に一気にお金をかけて生活しようかと思わないかというと、パソコンで数字やグラフをずっと見ながら生活するのが面白くないからだ。

副業としても、FXを毎日やるのはつらい。

それに何を産んでいるのか、その価値がいまいちわからないことも理由の一つ。

お金と数字が大好きな性質だったらハマる可能性もあったかも。

あの時はとりあえずキャッシュバックがもらえたし、損もなかったので、良しとしよう。

FXに向いていないだろう俺は本腰を入れてはいけない。

ああいう数字やグラフを見るのが好きで一気にお金を増やしたい人には、株やFXなどの投資っていうのは向いている人もいるかもしれないが。

教祖も言っていたが、向いていることをやることは大事だ。

さて、子分はこの後もFX取引を続けていた。

株でもFXでも仮想通貨でも失敗する初心者たちの特徴

前に本田清六という人の本『私の生活流儀』がkindleで安くなっていたか、無料だったので読んだことがある。

彼は明治から昭和の時代に生きた日本で最初の林学博士であり、造園家でもあったが、 貯金と株式投資によって莫大な財産を築いた人である。

その中で著者は以下のようなことを言っている。

世の中には、投資と投機とをこんどうしているものが少なくないが、投資と投機は全然ちがう。

私のここにいう投資とは、あくまで勤倹貯蓄で作り上げた資金を、最も有利有効に働かせることで、そこにいささかのムリや思惑があってはならない。

理想的に言えば、その元本の安全確実を第一とし、有利有望な事業(株式その他の方法で)に注ぎ込み、年々それから利益配当を受けていくことである。

投機とはしからず、ムリな金でムリな算段で、投機対象の実体をしっかりつかむことなしに、いわゆる一攫千金を夢見ることである。

ある程度の証拠金取引で、相場の高低を思惑するの類である。

したがって、予想通りになれば時として大儲けするが、予想が外れればたちまち大損をする。

大損するばかりでなく、他人にとんだ迷惑を及ぼすことになる。

私の流儀では絶対にとらないところである。

『私の生活流儀』本多清六

半端のない金持ちたちというのはだいたい投資をしている。

サラリーマンも、それをマネして、だいたい株とか投資信託とかFXに手を出している。

俺の親戚で大学の教授をやっていた人がいるんだけど、その人も今は退職してネットで株やFXをやっている。

身体を酷使する感覚がないから、労働するよりはお金を増やすのが簡単だと思うからなのだろう。

勝てればの話だが確かに金は増える。

だが、自分の分をわきまえなければいけない。

特に初心者はそうである。

先の本で彼はこう続けている。

では投資にはいかなる方法をとればよろしいのか。

それは必ず自分の金でやること。自分に与えられた信用利用の範囲内でやること。

投資対象の実体をしっかり掴んでかかること。

たとえ元も子もなくなる場合があっても、ただそれだけの損で済む範囲内にとどめること。

こういったところが私の流儀の根幹である。

『私の生活流儀』本多清六

先にも言ったが、信用取引(レバレッジ)といって、持ち金の何倍か、FXなら最高20倍以上ものお金をかけることができる。

当然、失敗したら払えないような負債を負うことになる。

ネットで調べればすぐわかるが、FXで借金を負って大変なことになっている人も多くいるのが現状だ。

何百万どころではなく何千万という借金をかかえることもある。

そういう人は、だいたいFXや株で一攫千金を狙ってしまうのである。

それは本田清六の言う「投機」だろう。

特に何もわかっていない初心者は、「投機」をしてはいけないのだ。

それは「対象の実態をつかんでいない」し、「それだけの損」ではすまなくなる。

ネットが発達して、個人がお金を投資にすることが数回のクリックでできるくらい簡単になったが、その簡単さゆえに気をつけたほうがいいこともある。

やるのは勝手だが、じぶんのやり方が「投資」なのか「投機」なのかはよく考えたほうがいい。

どうしてもお金を稼ぎたい初心者の人は少額でやるほうが賢明だろう。

前にも書いたが、俺の場合はキャッシュバックをもらえるからという理由で、DMM外為ジャパンに口座を作り、ちょっと取引をしてみたことがある。

キャッシュバックで数万もらえるのは、無職だった俺にとってはうれしいことだった。

少額で取引もやってみた。

損はしなかったが、自分には向いていないと悟った。

その理由は前の記事に書いている。

こういう世界もあるのだということは知れたのは、人生経験としてはよかっただろう。

先の子分はこのFXで失敗せず儲けることができるのだろうか。

副業でFXする男、取引を続けていった結果は……

「田中さん、今日なにするんですか」と子分が聞く。

田中さんというイメージからは想像できない風貌の教祖だが、これが国際化の波というものだろう。

「ん~、〇〇くんにフランス語の発音教えるんだよね」

「そうなんですね、俺もいっていいですか?」

「ん~、一対一でゆっくり教えたいんだけどな」

教祖はやんわり断る。

「損切のあれはやっておいたほうがいいと思うぞ」と教祖はボソっとつぶやいた。

やはりFXの取引には興味があるらしい。

「あ~、やってます……あ~、あがってきたな~……」

「今が買いどきぃ~! でもあんまり買いすぎるとよくないんだよな~……」

「あぁ~がぁ~れぇ、あぁ~がぁ~れぇ!」

テンションが上がって一人言のトーンが上がる子分。

だけど教祖は無視をきめてゲーテ全集から目を話さない。

「今何時ですか? まだ1時ですか!一日長いですね」

子分は無視されても気にせずに1人でしゃべり続ける。

「こんな短いろうそくなの、初めてみました! こういうこともあるんですねぇ~」

「そうなんじゃない」教祖はやはりFXのことにだけは答える。

「やめちくり~! 全然あがらね~や。損切だ、きょうは!こんなにぐずつくとは思わなかったぜ……」

「ここまでのぐずつきは、経験したことはないですよぉ……」

「確かにぐずついてる」教祖は画面にちらりと目をやり冷静に答える。

「あ~しくじった! 完全にしくじったなぁ~……だめだ! 全然勝てない…なんでだ……」

子分はさっきの勝ち分を失ったのか。

「待ちのFX!!」子分が叫ぶ。

彼はまだ粘るようだ。

FXで失敗したらしい男、帰りは上機嫌だった

「そろそろいきますか? 家帰るぞい♪家帰るぞい♪1時半ぞい♪」と子分が教祖に話かける。

「1時半?」

「ですね、そろそろいきましょう、自分も一回家にもどって、電源もってきます」

そういって、二人は立ち上がり、ドアを出ていく。

子分がなんだかよくわからない歌を歌っている。

教祖は楽しそうに笑いながら、街の雑踏に消えていった。

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