この記事は前回の記事「教祖と子分の話 (1) バイトの金でFXを副業でやる時代? 本当に損しないで儲かるのか?」の続き。
カフェにいたら、隣の席に座った二人組、教祖と子分(勝手に俺が名前をつけた)がやってきた。
教祖はゲーテの全集を読み、子分はmacbookでFXをやり始める。
子分は普段はレストランか何かでキッチンのバイトをしているらしい。
その時給の何倍ものお金をFXでつかのまに稼げたという。
たしかに、掛け金を多くしてうまくやれば、数クリックで稼ぐことも可能なのかもしれない。
実際に、それだけで生活している人もいるというのも聞く。
儲けを大きくするため自分の持っている元金の何倍ものお金をかけることができるレバレッジ(信用取引)という方法をつかう人も多い。
レバレッジを大きくかけて、相場が自分の読みと反対に動き、大きく損をする人もいる。
掛け金が大きくなれば一気に何百万、何千万が消えたりする。
それはネットで調べれば多くの実例をみることができるから知っている人も多いだろう。
株でもFXでも仮想通貨でも失敗する初心者たちの特徴
前に本田清六という人の本『私の生活流儀』がkindleで安くなっていたか、無料だったので読んだことがある。
彼は明治から昭和の時代に生きた日本で最初の林学博士であり、造園家でもあったが、 貯金と株式投資によって莫大な財産を築いた人である。
その中で著者は以下のようなことを言っている。
世の中には、投資と投機とをこんどうしているものが少なくないが、投資と投機は全然ちがう。
私のここにいう投資とは、あくまで勤倹貯蓄で作り上げた資金を、最も有利有効に働かせることで、そこにいささかのムリや思惑があってはならない。
理想的に言えば、その元本の安全確実を第一とし、有利有望な事業(株式その他の方法で)に注ぎ込み、年々それから利益配当を受けていくことである。
投機とはしからず、ムリな金でムリな算段で、投機対象の実体をしっかりつかむことなしに、いわゆる一攫千金を夢見ることである。
ある程度の証拠金取引で、相場の高低を思惑するの類である。
したがって、予想通りになれば時として大儲けするが、予想が外れればたちまち大損をする。
大損するばかりでなく、他人にとんだ迷惑を及ぼすことになる。
私の流儀では絶対にとらないところである。
『私の生活流儀』本多清六半端のない金持ちたちというのはだいたい投資をしている。
サラリーマンも、それをマネして、だいたい株とか投資信託とかFXに手を出している。
俺の親戚で大学の教授をやっていた人がいるんだけど、その人も今は退職してネットで株やFXをやっている。
身体を酷使する感覚がないから、労働するよりはお金を増やすのが簡単だと思うからなのだろう。
勝てればの話だが確かに金は増える。
だが、自分の分をわきまえなければいけない。
特に初心者はそうである。
先の本で彼はこう続けている。
では投資にはいかなる方法をとればよろしいのか。
それは必ず自分の金でやること。自分に与えられた信用利用の範囲内でやること。
投資対象の実体をしっかり掴んでかかること。
たとえ元も子もなくなる場合があっても、ただそれだけの損で済む範囲内にとどめること。
こういったところが私の流儀の根幹である。
『私の生活流儀』本多清六先にも言ったが、信用取引(レバレッジ)といって、持ち金の何倍か、FXなら20倍以上ものお金をかけることが簡単にできる。
当然、失敗したら払えないような負債を負うことになる。
ネットで調べればすぐわかるが、FXで借金を負って大変なことになっている人も多くいるのが現状だ。
何百万どころではなく何千万という借金をかかえることもある。
そういう人は、だいたいFXや株で一攫千金を狙ってしまうのである。
それは本田清六の言う「投機」だろう。
特に何もわかっていない初心者は、「投機」をしてはいけないのだ。
それは「対象の実態をつかんでいない」し、「それだけの損」ではすまなくなる。
ネットが発達して、個人がお金を投資にすることが数回のクリックでできるくらい簡単になったが、その簡単さゆえに気をつけたほうがいいこともある。
やるのは勝手だが、じぶんのやり方が「投資」なのか「投機」なのかはよく考えたほうがいい。
どうしてもお金を稼ぎたい初心者の人は少額でやるほうが賢明だろう。
前にも書いたが、俺の場合はキャッシュバックをもらえるからという理由で、DMM
と外為ジャパン
に口座を作り、ちょっと取引をしてみたことがある。
キャッシュバックで数万もらえるのは、無職だった俺にとってはうれしいことだった。
少額で取引もやってみた。
損はしなかったが、自分には向いていないと悟った。
その理由は前の記事に書いている。
こういう世界もあるのだということは知れたのは、人生経験としてはよかっただろう。
先の子分はこのFXで失敗せず儲けることができるのだろうか。
子分、FX取引を続けていった結果は……
「田中さん、今日なにするんですか」と子分が聞く。
田中さんというイメージからは想像できない風貌の教祖だが、これが国際化の波というものだろう。
「ん~、〇〇くんにフランス語の発音教えるんだよね」
「そうなんですね、俺もいっていいですか?」
「ん~、一対一でゆっくり教えたいんだけどな」
教祖はやんわり断る。
「損切のあれはやっておいたほうがいいと思うぞ」と教祖はボソっとつぶやいた。
やはりFXの取引には興味があるらしい。
「あ~、やってます……あ~、あがってきたな~……」
「今が買いどきぃ~! でもあんまり買いすぎるとよくないんだよな~……」
「あぁ~がぁ~れぇ、あぁ~がぁ~れぇ!」
テンションが上がって一人言のトーンが上がる子分。
だけど教祖は無視をきめてゲーテ全集から目を話さない。
「今何時ですか? まだ1時ですか!一日長いですね」
子分は無視されても気にせずに1人でしゃべり続ける。
「こんな短いろうそくなの、初めてみました! こういうこともあるんですねぇ~」
「そうなんじゃない」教祖はやはりFXのことにだけは答える。
「やめちくり~! 全然あがらね~や。損切だ、きょうは!こんなにぐずつくとは思わなかったぜ……」
「ここまでのぐずつきは、経験したことはないですよぉ……」
「確かにぐずついてる」教祖は画面にちらりと目をやり冷静に答える。
「あ~しくじった! 完全にしくじったなぁ~……だめだ! 全然勝てない…なんでだ……」
子分はさっきの勝ち分を失ったのか。
「待ちのFX!!」子分が叫ぶ。
彼はまだ粘るようだ。
FXフリーターの子分、帰りは上機嫌だった
「そろそろいきますか? 家帰るぞい♪家帰るぞい♪1時半ぞい♪」と子分が教祖に話かける。
「1時半?」
「ですね、そろそろいきましょう、自分も一回家にもどって、電源もってきます」
そういって、二人は立ち上がり、ドアを出ていく。
子分がなんだかよくわからない歌を歌っている。
教祖は楽しそうに笑いながら、街の雑踏に消えていった。
